【業務でのLLM活用】LLMの回答精度を劇的に向上させる。ファインチューニングとRAGの違いとは?

2024年10月09日
 【業務でのLLM活用】LLMの回答精度を劇的に向上させる。ファインチューニングとRAGの違いとは?

LLMの回答の精度を向上させるには?

LLM(大規模言語モデル)の活用を検討しているビジネスパーソンの方にとって、LLMからの回答の精度の向上は重要な課題かと思います。この記事では、LLMの精度を向上させるための主要なアプローチとして「ファインチューニング」「プロンプト設計」「RAG(検索による生成の拡張)」について、それぞれのメリットやデメリット、や違いを解説します。
この記事を読むことで自社のビジネスのユースケースに合わせてどの選択肢が最適か検討の一助になれば幸いです。

ファインチューニングとは

ファインチューニングとは、LLMに新たなデータを追加して再トレーニングすることで、特定のタスクやドメインに特化させる手法です。これは専門知識を要する特定の業務に関して非常に高い精度で回答できるようになり、細かいニュアンスやトーンの調整が可能です。

ファインチューニングのメリットとデメリット

  • メリット: 特定のタスクに対して極めて高い精度が得られる。トーンやスタイルを詳細にカスタマイズできる。
  • デメリット: トレーニングには時間とコストがかかり、ある期間までに学習内容に依存するため、定期的な再トレーニングが必要になります。

ファインチューニングのビジネスユースケース

  • トーンやスタイルの統一: 生成されるコンテンツや回答で、ブランドコンセプトにあった一貫性のあるトーンやスタイルを表現できます。
  • 複雑なプロンプト対応: プロンプトだけでは正確な結果が得られない場合、ファインチューニングによってモデルを特定のタスクに適応させ、より精度の高い出力が可能になります。
  • エッジケースの処理: 多くの事例や特殊なケースに対応する際、ファインチューニングにより細かいニュアンスを考慮した出力が可能となります。

プロンプト設計とは

プロンプト設計は、LLMの出力を調整するために、質問の仕方や指示の与え方を工夫する手法です。これはモデルがもともと持っている知識を最大限に引き出すことを目的としています。

  • メリット: すぐに結果を確認でき、コストがかからない。既存のモデルを活用しやすい。
  • デメリット: プロンプトだけでは解決できない複雑なタスクには限界がある。手間がかかる場合がある。

RAG(検索による生成の拡張)とは

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、LLMが外部のナレッジベースやドキュメントをリアルタイムで検索し、その情報を元に回答を生成する手法です。これにより、ファインチューニングを行わずに最新の情報に基づいた精度の高い回答が得られます。

RAGの登場背景には、モデルのトレーニング時点までのデータしか参考にできないためよりビジネスニーズに柔軟に対応するために最新情報へアクセスできることが求められてきたという点と、「ハルシネーション」(hallucination)と呼ばれるモデルが実際には存在しない、あるいは誤った情報を生成する現象に対応する必要があるという点があります。

  • メリット: 最新の情報を活用できる。トレーニング不要で、すぐに使える。コストが抑えられる。
  • デメリット: 外部リソースに依存するため、参照元の質によって結果が左右される。

RAGのビジネスユースケース

  • 常に変動する情報を取り扱う必要がある: モデルの事前学習データにない最新情報もナレッジベースから取得できるため、常に最新の情報を反映した出力が可能です。
  • 学習にコストをかけられない: モデル自体の再学習が不要なため、コストや時間を大幅に節約できます。

インターネット上からリサーチしたり、日々変動するにデータを元にインサイトを出すところでLLMを活用する場合、RAGが最適な選択肢になり得ます。

アプローチを日常に置き換えて理解する

LLMの3つのアプローチを理解するために、英語教育の例を使ってそれぞれの手法の違いを説明します。これにより、どのようなシチュエーションで各手法が有効かをより明確に理解できます。

1. ファインチューニングのアプローチ

英語の専門塾で特定の分野に特化した学習を行う

例えば、英語学習者がTOEIC対策の特別講座を受けて学習を行うことです。TOEICや英検などの試験に特化した問題や文章を参考書で大量に学習させ、その試験の問題に特化して高い精度で回答できるようになります。試験出題傾向が変われば、それに合わせて学習し直す必要があります。

2. プロンプト設計のアプローチ

質問の仕方を工夫して、相手により良い答えを引き出す

プロンプト設計では、オンライン英会話などで講師に対して、質問の仕方を工夫することで、より的確な答えを得ることを目指すアプローチです。何のために英語学習しているか、どのような部分がわからないのか、明確に伝えた上でセッションを受けることで期待通りのレッスンを結果を受けられるようになります。

3. RAG(Retrieval-Augmented Generation)のアプローチ

常にカンニングペーパーがある英語学習

RAGでは、持っている知識に加えて、外部のリソース(たとえば辞書やインターネット上の最新の情報)を取り込んで回答します。
通常の英語学習者は自分が覚えた単語や文法、フレーズに基づいて話したり書いたりしますが、すべてのスラングや新しい表現を知っているわけではありません。RAGは、常に「カンニングペーパー」を持っているイメージに近く、知らない単語やフレーズが出てきたときに、その場で最新の情報を引っ張ってきて、対応できるようにします。これにより、最新のスラングや新しい文法、語彙に対応することが可能になります。

まとめ

LLMの回答精度を向上させるためには、ファインチューニング、プロンプト設計、RAGの各手法があり、それぞれのアプローチは異なる強みと弱みを持っています。特に、ファインチューニングは特定の分野に特化した精度の高い回答を可能にし、RAGは常に最新の情報を反映した出力を得ることができます。プロンプト設計は、期待する回答を引き出すための有効な手法です。

特に、最新情報を取り入れつつコストを抑えたい場合には、RAGの活用が有効です。また、Difyのようなツールを使えば、RAGを簡単に導入し、迅速に成果を得ることが可能です。

シチュエーションに応じて、これらの手法を組み合わせて効果的に活用することで、ビジネスインパクトのある有効な生成AIの活用が目指せるでしょう。

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