Difyの料金プランを解説。自社の用途に合ったプランの選び方とは?

2024年10月07日
2024年11月02日
Shumpei Okanoue / Noviq Inc.代表
Shumpei Okanoue / Noviq Inc.代表
Difyの料金プランを解説。自社の用途に合ったプランの選び方とは?

Difyのクラウド版、コミュニティ版、Premiumの比較

Difyは、誰でも簡単にAIアプリケーションを開発できるプラットフォームです。
Difyには大きく分けると、クラウド版、コミュニティ版、DifyPremiumの3つの主な選択肢が提供されています。まずはそれぞれの特徴と利点を以下で表形式にまとめました。

プランの大分類

特徴 クラウド版 コミュニティ版 Dify Premium
デプロイ方法 Difyがホスティング 自社サーバーにセルフホスティング AWS EC2でのワンクリックデプロイ
費用 月額料金プランあり ソフトウェア自体は無料 AWS利用料金
サーバー管理 不要 必要 必要
データプライバシー Difyが管理 完全に自社で管理 AWS VPC内で管理
スケーラビリティ プランに応じたリソース提供 自社で管理・拡張 AWS上で容易に拡張
カスタマイズ 制限あり 完全カスタマイズ可能 ブランドロゴ等のカスタマイズ可能
サポート プランによって異なる(例: メール、チャット) コミュニティサポート 専用サポートあり
用途 開発リソースが限られたチーム向け カスタマイズを求めるチーム向け AWS上でセキュリティを重視した運用

Dify Premiumについては、AWSMarketPlaceからアプリケーションを動かすインフラを購入する形となり、本質的にはコミュニティ版に近い利用体系になります。後ほど詳細を解説します。

クラウド版

Difyのクラウド版は、Difyがホスティングするため、技術的な設定やサーバー管理が不要なサブスクリプション形式のサービスです。以下の4つのプランが提供されています。

クラウド版でのプラン一覧

  1. Sandboxプラン(無料)
    初心者や個人プロジェクト向けのプラン。基本的な機能を無料で試すことができます。

  2. Professionalプラン(月額$59)
    より多くのリソースを必要とする個人や小規模チーム向けのプラン。

  3. Teamプラン(月額$159)
    大規模なチームやプロジェクトをサポートするプラン。

  4. Enterpriseプラン(カスタム料金)
    大企業向けにカスタマイズされたプラン。すべてのリソースが無制限で提供され、専用のサポートが利用できます。

クラウド版のプラン解説

1. メッセージクレジット

プラン メッセージクレジット
Sandbox 200メッセージ
Professional 5000メッセージ/月
Team 10,000メッセージ/月
Enterprise 無制限

メッセージクレジットとは、Difyのサブスクリプションプランに付帯しているOpenAI(gpt-4を除く)の無料利用分です。
Sandboxプランでは200メッセージまで無料で試用できますが、Professionalプラン以上では月次でクレジットが付与されるため、より多くのメッセージが利用可能です。Teamプラン以上になると、かなり多くのメッセージを処理でき、Enterpriseプランでは無制限に利用できます。

なおEnterpriseプラン以外では、メッセージクレジットを使い切った後は、自社でLLMのAPIを設定する必要があります。

2. ドキュメントアップロード上限

プラン ドキュメントアップロード
Sandbox 50件
Professional 500件
Team 1000件
Enterprise 無制限

Sandboxプランは最大50件までのドキュメントアップロードが可能ですが、Professionalプラン以上ではより多くのファイルがアップロード可能です。Teamプランでは1000件、Enterpriseプランでは無制限のドキュメントアップロードが可能です。

ドキュメントの取りまとめやテキストの整形などにより、まとめることで節約しながら利用可能です。

3. チームメンバー数

プラン チームメンバー数
Sandbox 1人
Professional 3人
Team 無制限
Enterprise 無制限

Sandboxプランは1人のみでの利用ですが、Professionalプランでは3人まで、TeamプランおよびEnterpriseプランでは無制限にチームメンバーを追加できます。
こちらは管理画面にログインするメンバーであり、利用者側ではありません。

4. アプリ作成数

プラン アプリ作成数
Sandbox 10個
Professional 50個
Team 無制限
Enterprise 無制限

Sandboxプランでは最大10個のアプリを作成できますが、Professionalプランでは50個まで、TeamプランとEnterpriseプランでは無制限にアプリ作成が可能です。

5. ベクトルストレージ

プラン ベクトルストレージ
Sandbox 5MB
Professional 200MB
Team 1GB
Enterprise 無制限

ベクトルストレージとは、テキストデータやドキュメントを数値ベクトルとして保存するための技術です。これにより、テキストを効率的に検索、比較、そして類似度評価ができるようになります。
Sandboxプランは5MBのベクトルストレージが提供され、Professionalプランでは200MB、Teamプランでは1GBまで拡張されます。Enterpriseプランでは無制限のベクトルストレージを利用できます。

6. サポート

プラン サポート
Sandbox コミュニティフォーラム
Professional メールサポート
Team 優先メール&チャットサポート
Enterprise 専用Slackチャンネル、電話、メールサポート

Sandboxプランではコミュニティフォーラムでのサポートが利用可能ですが、Professionalプラン以上ではメールサポート、Teamプランでは優先的なメールやチャットサポートが受けられます。Enterpriseプランでは専用のサポートが提供され、Slackチャンネルや電話でも対応が可能です。

コミュニティ版

Difyのコミュニティ版は、セルフホスティング型のオープンソースプラットフォームで、ユーザーが自分のサーバーにDifyを展開し、さまざまな要件が合った際に拡張可能な環境を構築できます。データのプライバシーを重視する企業に向いています。

コミュニティ版で発生するコスト

コミュニティ版自体はオープンソースで提供されているため、ソフトウェア利用には料金は発生しませんが、セルフホスティングを行うために次のような運用コストが発生します。

  1. サーバーの運用コスト
    Difyをホスティングするためのサーバー(例: AWS EC2やオンプレミスのサーバー)のレンタル費用や管理コストがかかります。

  2. データストレージ
    ドキュメントやベクターデータを保存するためのストレージ費用が必要です。特に大量のデータを扱う場合、ストレージ容量に応じた料金が発生します。

  3. メンテナンスとアップデート管理
    コミュニティ版は自社でホスティングして運用するため、Difyのメンテナンスやアップデートは自分たちで管理する必要があります。そのため、開発リソースや時間が必要になることがあります。

コミュニティ版のデプロイ方法

  1. Docker Composeでデプロイ
    Docker Composeを使用して簡単にDifyをセルフホスティングできます。以下の手順でデプロイが可能です。

必要条件:
CPU: 2コア以上
RAM: 4GB以上

手順:

  1. DockerおよびDocker Composeをインストール。
  2. Difyのリポジトリをクローンします:
bash
git clone https://github.com/langgenius/dify.git
cd dify/docker
  1. .env.example.envにコピーし、必要に応じて環境変数を調整します:
bash
cp .env.example .env
  1. Docker ComposeでDifyを起動します:
bash
docker-compose up -d
  1. ブラウザでhttp://localhost/installにアクセスし、初期設定を完了します。

この方法は、技術に詳しいユーザー向けで、素早くDifyを自社環境に展開したい場合に最適です。
また自社サーバーへ情報が保存されるため、クラウドサービスに比べ自社でデータを監理することができます。

  1. ローカルソースコードで起動
    Difyをソースコードからローカル環境で起動して、自由にカスタマイズや開発を行うこともできます。

手順:

  1. GitHubからDifyのソースコードをクローンします:
bash
git clone https://github.com/langgenius/dify.git
cd dify
  1. 必要な依存関係をインストールします(例: Node.js、Pythonなど)。
  2. 開発環境のセットアップを行い、Difyを起動します:
bash
npm install
npm start

この方法は、Difyのコードベースに変更を加えたい開発者や、独自機能を実装したい場合に向いています。
個人利用の場合などはこの方法で十分対応可能かと思います。

コミュニティ版の利点

  • 完全なコントロール: セルフホスティングのため、データのプライバシーを自社で管理できます。
  • カスタマイズ自由度: 環境変数やソースコードに手を加え、独自のニーズに合わせたカスタマイズが可能です。
  • 費用対効果: オープンソースであるため、ソフトウェア利用料は無料で、サーバー運用コストのみで導入できます。

コミュニティ版は、独自サーバー環境を構築してデータ管理を行いたい企業や、自由にシステムをカスタマイズしたい開発者に最適です。

コミュニティ版の注意点

  • セキュリティ要件がある場合は別途カスタマイズが必要: 自社でサーバーを立ててホスティングする場合、作成したアプリを公開アプリ、またはwebページへの埋め込みチャットで公開すると、一般公開となってしまうため、特定の組織内のユーザーのみ利用可能にする場合などは認証されたユーザーのみにアプリを開放するように認証ロジックの実装が必要です。

コミュニティ版は、独自サーバー環境を構築してデータ管理を行いたい企業や、自由にシステムをカスタマイズしたい開発者に最適なプランです。

Dify Premium

Dify Premiumは、AWS AMI(Amazon Machine Image)として提供されているセルフホスト型のDifyソリューションで、企業が独自のブランドカスタマイズを行いながら簡単に導入できる製品です。特に、プライバシーを重視しつつAWS上で効率的にアプリケーションを運用したい企業に向いています。

基本的にはほぼ、コミュニティ版と同じですが、デプロイなどが簡単といったところが主な差分です。

特徴

  • ワンクリックでデプロイ: AWS Marketplaceを通じて、EC2インスタンスにワンクリックでDifyを展開可能。
  • カスタマイズ可能なブランドロゴ: 独自のブランドロゴやデザインを使用してDifyをカスタマイズできます。
  • 中小企業向け: 複数のアプリケーションをサーバー上で効率的に運用したい中小企業に最適です。
  • データのプライバシー管理: データが自社のAWS VPC(Virtual Private Cloud)内に保管されるため、プライバシーの確保が容易です。

導入手順

  1. AWS Marketplaceから購入: AWS MarketplaceでDify Premiumを購入し、EC2インスタンスにデプロイします。
  2. セットアップ: EC2インスタンスの初期化パスワードを使用して管理者設定を行い、Difyにアクセスします(デフォルトではHTTPポート80を使用)。
  3. カスタマイズ: 必要に応じて、.envファイルやDocker Composeの設定を変更し、システムを再起動してカスタマイズを反映させます。

Dify Premiumの利点

  • セキュリティとプライバシーの確保: データがAWS VPC内に保管されるため、外部への情報漏洩リスクを軽減できます。
  • 柔軟なカスタマイズ: 独自のブランドに合わせたカスタマイズが可能で、企業のニーズに応じたデプロイができます。
  • 簡単なスケーリング: AWS上で実行されるため、ビジネスの成長に応じてスケールアップが簡単に行えます。

Dify Premiumは、セキュリティやプライバシーに重点を置きつつ、AWSインフラ上でのスムーズな導入を求める企業に最適なソリューションです。

まとめ

Difyは企業がAIのアプリケーションを開発し生産性を向上させるのに非常に強力なツールとなります。企業にごとに自社の開発リソースがどの程度対応できるか、また利用要件としてセキュリティ、データ管理の観点を整理した上で、オプションを正しく選択することが重要です。

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